診療規模拡大・高機能化および臨床研究の拡充 -それを支える経営改善の取り組み- (独立行政法人国立病院機構 災害医療センター・300-500床未満)
WEB展示会TOP >
事例を探す >
診療規模拡大・高機能化および臨床研究の拡充 -それを支える経営改善の取り組み-
医療機関名 |
独立行政法人国立病院機構 災害医療センター |
経営主体 |
国公立病院 |
病床規模 |
300-500床未満 |
所属部門 |
その他 |
投稿者 |
院長 高里 良男 先生 |
公開日 |
2013-11-01 |
- 背景
- ■ 病院経営上の問題認識と目標
1.過去債務の返済
⇒ 利益は黒字だが貸借対照表上では大きな問題を抱えているため、これを解消したい。
⇒ 将来的にはキャッシュフロー経営で運営できる体質に。
2.施設・医療機器への将来投資
⇒ 損益計算書上の黒字を自己投資(人材・医療機器など)に回したい。
3.高度急性期を担うマンパワーの確保(看護師、医師、コメディカルなど)によるチーム医療の充実
⇒ 高度急性期(DPC?群)、がん拠点病院を目指す。
4.職員満足度(ワーク・ライフバランス)の向上
⇒ 年休取得・勤務時間の短縮、特別ボーナスなど給与改善。
- 取り組みの内容
- ■ 問題を解決し、目標を達成するために何を行ったか?
1. 加重債務整理臨時特例措置を利用し、債務額減少
2. 経営データを用いた分析
⇒ 様々な切り口での収支分析(例:医師一人当たり診療収入の全国平均比、医師一人あたり診療科別収支)
各診療科、各職域の【総診療収益 ‐(材料費+人件費)】はそのまま各科、各職域の純利益ではない。病院は固定費型で運営されているため、固定費(減価償却費、人件費、元本・利子払い)への各科、各職域の分担額をも含めて純利益といえる。そこで、各科・各職域の損益計算=原価計算のために、損益分岐点分析を活用した経営分析が有効となる。
3. 様々な経営改善の介入策を実行
(1)営業規模の拡大により、収入UPを図る。
(2)管理マネジメントの徹底により、収入安定および、コストDOWN を図る。
(3)医業外事業の展開も積極的に。
1)事業収入の増大
a. 検診業務の拡大 → 土曜日診療の拡大。高額医療機器の有効利用等。
b. 治験事業の拡大 → 病院のブランド力の強化。
2)職員の確保と働きやすさの強化
→保育所の受入数増加、看護学校の強化。
4. 病院管理の強化
(1)診療材料・薬剤材料費の管理(適正目標数値)の提示を分析により確認する。
1)医療材料費として一本化。
2)SPD の病院全購入品のトレースの完璧化:ヒラソル、電子請求データを含む新情報管理システム(DWH)の活用。
(2)検診業務の増加
1)土曜日、週日時間外の高額・価格高騰した医療機器の利用。
2)脳ドック、肺がん、将来的に乳がん検診、内視鏡 など。
5. 材料費適正管理検討会を開催
(1)高費用体質からの脱却
(2)医薬品、診療材料を合わせて現状より数%低減する
1)不良ストックの整理。(回転率の確認)b. 薬品のジェネリック化。
2)市場平均購入価格より価格を低くすることを目指す。(特に高頻度使用材料)
3)持ち込み薬対策。(薬剤師の増員等)
4)同種同効薬の整理。(品目数の減少を目指す)
6. 検診・自費診療業務増加策検討会を開催
(1)高額医療機器の有効活用(減価償却対策)→関係部署の機器更新と高規格化
1)放射線部門で時間外(週日、土日)の検査時間枠をどれだけ確保できるか。
2)脳ドック:?MRI 一式 ?空腹時採血 ?脳血流測定
3)外来との抱き合わせ。
4)肺ガンドックの展開策。
5)営業活動。(パンフレット、外回り、年間予約)
7. 院内病院経営セミナーの実施
職員一人ひとりに経営感覚を持ってもらい、質の高い医療を目指す。
(1)診療の質を上げる
病院の高機能化(自己投資)、 診療機能・規模の拡大(増員)が必要。
(2)職員満足度を上昇させる
待遇改善、増員・労働環境改善が必要。
経営改善は、これらを継続的に実現するために必須の『手段』であり、「良い待遇」と「人間関係の克服と充実」が、職員にとってのやりがいにつながる。
- 取り組み後の状況
- ■ 経営改善の結果、どのような成果が生まれたか?
1. 一人1日あたり診療単価の増加
2. 救急車搬送患者数の増加
3. 新外来紹介患者数と紹介患者数の増加
4. 新入院患者数の増加と在院日数の短縮
5. 登録医の拡大
6. 病院・診療所訪問件数の増加
7. 通院治療センター利用者件数の増加 ・・・などを達成!
■ 課題と将来目標=材料費(診療材料費・医薬品費)の削減
1. 医薬品費の削減
国立病院機構で一括購入しているため、院外処方等のフロー部分での削減に注力した。以下がその取組みと、今後の課題である。
<医薬品費比率削減で行った取り組み>
・ジェネリックシフト(購入費比率で 30%になるように推進)
・外来での院内処方を減らし、高額な内服抗がん剤を院外処方にして購入代金を削減
・不要薬剤の削除
・院内在庫を減少
・抗生剤の整理を行い、10%の品目を削減
・持ち込み薬の活用
<今後の課題>
・棚卸しの見直し(在庫の定数見直し)
・ジェネリック薬のジェネリックシフト
・共同入札をどうするか?
・薬価差益についての考え方の見直し
・抗生剤の院内ガイドライン作り
・栄養管理の強化による輸液の減少を目指す
・G?CSF、EPOなどの同効品の整理及びジェネリックシフト
・抗真菌剤の整理
2. 診療材料費の削減
現状の問題点
・SPDの管理している院内在庫品については管理されているが、定数在庫は過大。
・持ち込み品については管理されていない。
・採用品目が多すぎる。(一増一減の問題)
・ベンチマークでほぼ平均価格にはなっているが、最低価格ではない。
・納入業者が偏っている可能性あり。
・納入価格が前年比で低下していない。
・購入価格総額に対しての値引率ではなく、値引率の平均値となっており、業者優位。
・請求漏れの可能性。(医事整合のチェック時期が遅い)
<今後の診療材料比率の削減に向けて>
・購入代金削減⇒購入価格の見直し
・病院幹部より問屋に対して状況説明を行う
・マスタの整理⇒一増一減ではなく、採用品目の削減
・持ち込み材料について購入方法の変更 ⇒ 契約係が事前チェック
・同効品に変更し代金の削減(カテーテルの資材変更、統一なども含めて)
・SPDワーキンググループ設置
テーマと関連する企業・商品
有限責任監査法人トーマツ(ヘルスケアコンサルティング部)
総合コンサルティングファームとして経営管理分野を中心に医業経営をサポートします。
所在地:大阪市中央区今橋4-1-1 淀屋橋三井ビルディング
TEL:06-4560-6034
<< 前のページ 5 6 7 8 9 10 11 12 13 次のページ >>