病院情報システムのランニングコスト低減策とその効果 (社会福祉法人恩賜財団済生会支部 大阪府済生会泉尾病院・300-500床未満)
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病院情報システムのランニングコスト低減策とその効果
医療機関名 |
社会福祉法人恩賜財団済生会支部 大阪府済生会泉尾病院 |
経営主体 |
公的病院 |
病床規模 |
300-500床未満 |
所属部門 |
情報システム |
投稿者 |
吉仲 努(医事課 課長補佐) |
公開日 |
2015-04-01 |
- 背景
- 病院情報システムに係るコストは、「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」に分ける事が出来ます。イニシャルコストとはシステム導入時にかかる諸費用の事をいい、ランニングコストとは人件費・電気代・保守費用・場所代・機器更新費用など、システム運用管理の為に継続的にかかる諸費用の事をいいます。ランニングコストの低減策には諸費用によって様々なものがありますが、「費用をかけずに」出来るランニングコスト低減策には限界があるのが実状であり、大幅な削減には、当院のようにトリガーとなる「契機」が必要となる場合もあるかと思います。
当院では平成24年3月に、従来の電子カルテシステムから他ベンダの電子カルテシステムへの更新が行われることになりました。その際、旧電子カルテのデータコンバートが困難(特に記事情報はコンバート不可能)であることから、新旧電子カルテシステムの二重運用が余儀無くされ、一般情報系システムを含めると都合3系統のネットワークを管理することになりました。必然的に病院情報システムのランニングコスト増大が予想される為、当院ではこれを契機に、電子カルテシステム更新にあたっての問題点を洗い出し、ランニングコスト低減策としての解決策を考案・実施致しました。
- 取り組みの内容
- まず、新電子カルテシステム導入時の問題点を洗い出したところ【(1)診療現場に3台のパソコン設置によるスペース不足。(2)異なるネットワークを3重に管理することによる電気代・更新費の増大。(3)フロアスイッチ設置場所(EPS内)が狭い為、機器を設置できない。】という3つの問題点が判明しました。そこで、これら3点を解決し、病院情報システムのランニングコストを抑えることの出来る以下の施策を実施しました。
まず、【(3)フロアスイッチ設置場所(EPS内)が狭い為、機器を設置できない。】という問題について、「ネットワークの統合」による解決を図りました。統合に際して旧電子カルテのLAN配列はそのまま流用した上で、新たに購入したL3・フロアスイッチ等に旧電子カルテのLAN配線を収容し、フロアスイッチの設置場所を確保しました。また、新しい一般情報系のVLANを新設し、システム更新後に一般情報系ネットワークと新電子カルテシステムのネットワークが重複しないように対処しました。
次に、【(2)異なるネットワークを3重に管理することによる電気代・更新費の増大。】の問題については、「旧電子カルテシステムの仮想化」によってシステム自体のサイズ・消費電力・重量をほぼ10分の1以下に抑えました。最後に【(1)診療現場に3台のパソコン設置によるスペース不足。】の問題については、VDAを10台、RDSCALを20台(同時アクセス数は10台まで)購入し「旧電子カルテ端末の仮想化」を行い、端末を約200台ほど撤去いたしました。
また、当院ではこれらの施策に加え、「一般情報系端末の仮想化」の為、アプリケーションの仮想ソフト50台分とRDSCALを250台分(同時アクセス数は50台まで)追加購入致しました。
- 取り組み後の状況
- 上述したように、当院では電子カルテシステムの更新によって増大するランニングコストを削減する為、【(1)ネットワークの結合。(2)旧電子カルテサーバ・端末の仮想化。 (3)一般情報系の仮想化。】を実施致しました。その結果、当初想定されていた3つの問題点が全て解決できただけでなく、管理機器の数についても、当初の予想よりサーバ数を15台、パソコンを250台、スイッチを25台削減することに成功しました。
当院の取組みのポイントとして、病院情報システムのランニングコスト削減にあたって、ネットワークの統合が特に効果的であることが分かりました。また、システムや端末の仮想化にあたっては、仕組みをよく理解して賢く運用する事が肝要です。当院の場合、今後の運用を考えて旧電子カルテシステムはデスクトップの仮想化(VDI)を、一般情報系端末はアプリケーションの仮想化(SBC)を行いました。そして、当院でもそうであったように、大規模なシステム改変を「チャンス」として見逃さないことが、ランニングコストの増大を防ぎ長期的なコスト逓減を実現する第一歩となると考えています。
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