MRPベンチマークシステムを活用した診療材料費削減の取組み (東大阪市立総合病院・500床以上)
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MRPベンチマークシステムを活用した診療材料費削減の取組み
医療機関名 |
東大阪市立総合病院 |
経営主体 |
国公立病院 |
病床規模 |
500床以上 |
所属部門 |
用度・調達 |
投稿者 |
小林 雅弘(事務局総務課 施設管理係 係長) |
公開日 |
2015-03-10 |
- 背景
- 当院の診療材料費の年間購入高は13億円前後あります。予算規模が大きいため、前年度比での削減目標率を提示した交渉など、様々な取り組みを以前から行っており、平成19年には病院全体で価格交渉に臨んだ結果、年間7千万円という大きな削減を達成しました。しかしながら診療材料の購入担当者は例年1人であり、それに加え定期的な市役所との人事異動が伴います。その為、コンサルを導入し相手方の会社まで医療者と赴き交渉する担当者もいれば、その年度の事務をこなすだけで精一杯といった担当者もあり、交渉力が一定していないことが大きな問題でした。
当時、私も市役所から異動してきて1年目で右も左も分からず事務をこなすのみの状態であったところに、事務局次長(現、事務局長)から2つの指示がありました。1つ目は循環器内科で使用する心カテ関連材料費の削減、2つ目はMRPベンチマークシステムを利用した新たな価格交渉への取り組みでした。
MRPベンチマークシステム導入に向けては、導入施設への訪問や、MRPユーザーサポート講習会を経て、導入コスト以上の削減効果があると確信が得られたことから、平成25年1月からMRPベンチマークシステムの利用を開始し、今日に至ります。
- 取り組みの内容
- 当院の心カテ関連材料は年間約2億円以上の購入がありながら、採用となっている種類の多さからロスを防ぐため現場での預託在庫方式を採り、症例日にあわせた材料の準備など、ソフト面でのサポートを含め開院から1業者がほぼ全てを管理していました。現場での作業内容や運用が把握できていなかったために、なかなか手をつけることができなかったのですが、循環器内科の部長が見直しに積極的であったため、現場の利益を損なうことのない条件を両者で検討することにより、業者を見直すことができました。
業者を見直すために、以下の4点を仕様書に明文化し、いかなる業者でも価格が安ければ当院のカテ材料を一手に担うことができるようにしました。
入札にあたっては入札説明会に循環器内科の部長も参加し、病院として価格削減に取り組んでいることを自ら説明してもらったこともあり、結果、年間試算で約2千万円の削減をすることができました。この時に決定した償還改定時のルールに基づき、今年度も大きな交渉を経ることなく価格削減ができています。
- 取り組み後の状況
- MRPベンチマークシステムを用いた価格交渉の最大の利点は、根拠のある数字をもって価格交渉に臨めることです。価格交渉は卸業者と行うこととなりますが、従来の方法では、「メーカーがこれ以上下げることができないと言っています」や「この商品は昨年に下げたので…」などの回答があった場合に、業者を信頼するしかなく、交渉を継続する材料が無いためにこちらとしても決め手に欠いていました。しかしながらMRPベンチマークシステムを利用することにより、以下のようなPDCAサイクルによる交渉が可能となりました。その結果、導入初年度には、心カテ関連材料を除いた診療材料で年間試算600万円の削減を達成することができました。
価格交渉にあたっては、書面やデータのやり取りのみでなく、業者と個別に面談等を行ったことがとても良かったことと感じています。じっくりと話を聞くことで、卸業者や各メーカーの当院に対する協力姿勢が見えると同時に、競合商品やメーカーの置き換えに関する提案などの生きた情報を得ることができたからです。
「卸業者は病院にとっての大事なパートナー」、「病院の手足となって働いてくれている卸業者を叩くのではなく、一緒になってどのようにしたら費用削減をできるのかを考えることが大切」と、ある研修会で講師の方が言っていました。ベンチマークでの判定が悪いことなどを告げると、今までの交渉では「メーカーがこれ以上下げることができないと言っています」で終わっていたものが、「うちも高く買わされているってことですね。もう一度メーカーと話をさせてください」に変化し、場合によっては協力をしてくれないメーカー以外のメーカーを紹介してくれるようなこともありました。
今では診療材料委員会での採用基準にMRPベンチマークシステムを用いた価格を導入し、それ以外のケースでも卸業者から「この価格で目標価格はクリアできそうですか?」と尋ねてくることも多くなりました。そのような関係性を卸業者と築くことができたことは、目に見えない大きな導入効果であったと感じています。
自治体病院である以上、どの施設でも担当者の異動はあると思います。そのような中でいかに病院としての価格交渉力を落とさないようにするかがとても大切だと思います。MRPベンチマークシステムを利用し、新しい担当者でも一定の交渉が可能となる平準化マニュアルを作成する、卸業者から進んで協力してもらえる関係性を築く、現場の医師にコストを意識してもらうなど、そうした仕組みを構築し絶えず運用していくことが、『担当者レベルで終わらない価格削減』に取り組んでいくためには必要と思います。
今後は安く買えているものが適切に使用でき、かつコストに繋がっているのか、その検討を進めていく必要があると考えています。
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