診療材料費削減のための材料の変更・統一化 (京都大学医学部附属病院・500床以上)
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診療材料費削減のための材料の変更・統一化
医療機関名 |
京都大学医学部附属病院 |
経営主体 |
特定機能病院 |
病床規模 |
500床以上 |
所属部門 |
用度・調達 |
投稿者 |
林 寿美子(経理・調達課 課長補佐) |
公開日 |
2014-07-25 |
- 背景
- ■診療材料費削減の取り組みを始めたきっかけ
国立大学の法人化と病院の経営赤字という状況から、購買管理を改善したいという思いで、平成16年2月から価格改善に向けた取り組みを実施した。
■診療材料費削減に向けた取り組み
1. 既存品の価格改善(MRP ベンチマークシステムを基にした価格交渉)を下記の流れ・方法論で実施
(1)まず、現状の購入状況の分析を実施。
(2)実交渉開始(当院では、調達事務職員だけで交渉を行っている)。
1)償還材料と一般材料に区分け→年1 回の全品交渉(10,000 アイテム)
2)ベンチマークを使い目標価格を設定。交渉4年目ごろからは全て病院側で精査し、価格を設定している。また、償還改定は率スラ以上を目標設定
3)交渉が難航した業者については商権の変更を実施
4)交渉3年目からは「メーカー総価(1メーカーにつき1ディーラー)」とし、業者間競争を引き出すこととした。
- 取り組みの内容
- 2. 新規材料の交渉
(1)交渉のためのルールを、年間交渉後の新規は「同メーカー・同定価・同償還=同一価格以下」と設定。
(2)新規材料 価格は最初が肝心!
1)ベンチマークを使い、目標価格を設定
2)目標価格をある程度クリアするまでは採用保留
3)年1 回の全体交渉で対応の悪いメーカーの新規は、絶対に妥協しない
4)交渉が難航する場合は、申請者やメーカーに口添え頂く
5)委員会においては、調達事務職員から見て、「同等品がある、コストUP になる」など採用に疑問があるものは、資料を作成し積極的に発言した。結果的に不採用に持っていった品目もあった。
6)OP室に“簡単”に在庫を置かせないのも1つの手段(「無駄遣い」を防ぐ!)
交渉者にとって大事なことは商品を知ること、有利性、話術、価格追求心、商品の値頃感。これらは、実践の積み重ねと経験でしか得られないものである。
3. 材料の変更、統一化
ベンチマーク交渉だけでは限界があり、既存品の価格が下がらないため、他者製品への切り替えに取り組んだ。まずは雑品や汎用品(シリンジ、針等)等、できるところから取り組みを行い、必要に応じて現場でのサンプリングを実施した。
その後、徐々に商品を「こだわりの強いもの」へと移していった。
結果として取引が活性化し、ベンチマーク交渉にも好影響が出た。業者が率先して取り扱い品目の切り替えを依頼してくるものがあり、また既存メーカーでなく他メーカーの提案を募ると削減効果は倍増することもわかった。
4. 共同調達の実施
当院は大阪市病院局をパートナーとし、共同調達を試みた。この二院で共同調達を試みた理由は以下の通りである。
(1)お互い同規模の高度急性期病院で、同エリア内で同等レベルの購入価格で調達を行っており、また単独施設での価格交渉に限界を感じていた。
(2)更なる購入額削減を目標としていた。
(3)材料の変更が可能な土壌があった。
5. 共同調達の方法論
当院では共同調達を試みる際、以下の方法論に従って実施した。
(1)共同交渉(一物一価複数仕入先)を手法に
(2)看護師が使用する一般汎用品や雑品など、単価が安く使用量が多い、切り替えしやすい商品を共同交渉対象とした。まずは、ディスポエプロン(袖付、袖なし)と吸引カテーテル(口腔・鼻腔用、気管内挿管用)を試行的に開始。
6. 共同調達の方式
(1)同一メーカー品を同一価格で採用⇒材料の変更前提
(2)見積り合わせの方式は、(独)国立病院機構が実施する“医薬品等の共同入札”の方式を参考に
(3)商品の採用期間は「3年間」
(4)メーカー宛に通知後、ディーラ宛に通知、毎回必ず説明会を両施設参加して実施
(5)見積り合わせは「予定価格」を設定し両施設立会いで「入札形式で実施」
- 取り組み後の状況
- ■共同調達の結果
共同調達試行の結果、両院の材料費削減に成功した。
【要因】
(1)両施設が足並みを揃えて最後まで協同できたこと
(2)材料の変更を前提に行ったこと
(3)対象品の選定:今回選定した品目はメーカーから“PR”や“売り込み”のあった製品であり、病院・メーカー双方に利益を出すことができる商品だった。
今回の共同調達を通じて、一番大切なことは「病院が個別の購買力をつけること」と「参加施設が足並みを揃え協同すること」である事がわかった。
■調達事務担当者の役割とは
(1)病院の健全経営・健全運営に貢献すること が本来の役割
(2)経営のマネジメントとは、事務職がやるべきで事務職にしかできない
(3)医療者の意向を汲みながら冷静かつ適正な判断が必要
■役割を果たす為には
(1)何事にも興味を持つ⇒調達の中味、医薬品や診療材料を知る努力をする。掛の人、課内の人、現場、取引業者、委託業者が何をしているのか、どういう仕事をしているのか知り理解する。
(2)広く大きなアンテナを張る⇒病院内、世の中の流れを読む、動きをみる。
(3)良いと思うことをすぐ実行する、実行を継続する。
明日からでもやれることはあります。大事なのは、“やる気”と“実行力”です。
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