H病院における消化器外科手術のサーベイランスの現状と推移 (碧南市民病院・300-500床未満)
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H病院における消化器外科手術のサーベイランスの現状と推移
医療機関名 |
碧南市民病院 |
経営主体 |
国公立病院 |
病床規模 |
300-500床未満 |
所属部門 |
医療安全 |
投稿者 |
生田 幸江(医療安全管理室) |
公開日 |
2016-01-25 |
- 背景
- H病院は第2次救急の地域中核病院で、急性期病院として役割を担う病院である。
年間手術件数は1,900件以上で多種多様な手術手技が行われる。
2012年に現状把握と感染対策の充実を図る目的で
手術部位感染(Surgical Site Infectionの略:以下SSI)サーベイランスが開始された。
課題として、主治医の判定で行っていること、どのような感染が多いのか少ないのかが分からなかったため、
感染対策導入後の感染率の推移と効果を検討した。
手術部位感染(SSI)とは?
手術操作が直接及ぶ部位に発生する感染(切開部の創感染だけでなく、手術操作が加わった深部臓器や体腔を含む)。
・外科手術後合併症として最も頻度が高いもの。
・術後30日以内に発生するもの。
・インプラントなど挿入時は術後1年以内に発生するもの。
- 取り組みの内容
調査期間・方法
(1)調査期間:2012年1月~2013年12月まで
(2)調査区分:第1期(2012年1月~12月)、第2期(2013年1月~ 6月)、第3期(2013年7月~12月)
(3)対象手術:結腸手術(以下、COLN) 、胆嚢手術(以下、COHL)、 直腸手術(以下、REC)
(4)調査方法:毎日行われる手術に対してサーベイランスシートを用いて(1回以上/1週間)創部等を観察。
それ以外はカルテより情報収集を得た。1期ごとに関連部署にフィードバックを実施した。
(5)判定基準:厚生労働省サーベイランス事業(以下:JANIS) の毎年前年度データと比較
SSI対策の内容
【第1期】
・病原体曝露の低減を実施。予防抗菌薬の投与時間の徹底と消毒に仕方について検討。
・主治医の判定で開始
【第2期・第3期】
・術中の全身管理として、術中後の低体温予防、閉創時表皮の洗浄の強化や併存疾患のコントロールでは
DM既往者並びに術後2日間の血糖値の把握と対応を試みた。
・判定を感染対策チームと外科医と改める。
- 取り組み後の状況
SSI感染率の結果
【第1期】
COLN(6/51件11.8%)、REC(0/8件0%)、CHOL(2/44件4.6%)であり、COLNの1件を除くすべてが表層切開創。
【第2期・第3期】
第2期
COLN(8/28件28.6%)、REC(2/8件25%)、CHOL(2/40件5%)であり、表層切開創7件、深部切開創0件、臓器体腔5件。
第3期
COLN(8/32件25%)、REC(4/7件57.1%)、CHOL(0/43件0%)であり、表層切開創5件、深部切開創0件、臓器体腔7件。
JANISデータと比較すると、第2期ではどの手術手技も90パーセンタイル値を超えていたが、
第3期ではCOLNは75パーセンタイル値、CHOLは25パーセンタイル値となった。RECは90パーセンタイル値を超えおり、
その原因がすべて縫合不全などの臓器体腔であった。
結論
消化器外科手術においてSSI発生率が高いこと、特にRECにおいては臓器体腔の感染が多いことがわかった。
また、CHOL・COLNに関しては、サーベイランス導入によってSSI発生率の低下がみられた。
サーベイランスの監視効果とその後のフィードバックにより、SSIの発生状況を可視化できた。
医師からも「驚いた、次年度の目標は感染症の減少」など意欲の向上が見られた。
今後は統計学的解析を用いて因果関係を明らかにし、医療スタッフが感染対策に正しい知識と責任感を持って
日々対応していけるようサーベイランスを継続していく。
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