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法人化後の大学病院経営と民間病院経営 ―東大病院とがん研有明病院の取り組み― (公益財団法人 がん研究会・500床以上)

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医療機関名 公益財団法人 がん研究会
経営主体 特定機能病院
病床規模 500床以上
所属部門 その他
投稿者 櫛山 博(病院本部 副本部長)
公開日 2011-09-30
背景
国立大学の法人化については平成9年以前から様々な議論が行われてきた。平成9年3月頃、文部科学省が東京大学医学部附属病院に民営化に関して協議するように指示し行われた、東京大学医学部教授会における検討では、民営化の必要性が謳われた。
実際に法人化によって変わったことについて、財政に関しては予算の使用方法について法人の裁量が認められたが、政府調達の契約等の規制によって、物を買ったりするのは以前までと同じように縛りが残った。また、組織運営・人事に関しては、法人化と時を同じくして行われた卒後臨床研修の義務化等によって医師不足に拍車がかかり、経営方法の変化と相まって病院として非常に大きな対応を迫られた。
また、法人化後の国立大学病院全体の推移(平成16 年度?平成22 年度)を見ると次のような特徴が見られる。?患者数は外来・入院共に増加傾向。 ?新入院患者数は増加し、平均在院日数は減少傾向。 ?医師・看護師等は増加しているが、事務職員は減少傾向。 ?機器資産の残存価額割合が少なく、機器の更新が出来ていない。 ?臨床医学国際論文数が減少している(日本のみ)
取り組みの内容
まず、国立大学の法人化に伴う、東京大学医学部附属病院の取組みを紹介する。東京大学医学部附属病院では、それまで責任が大きい割りに権限小さく、調整役としての機能が主だった病院長の権限を大幅に拡張し、人事権を大学ではなく病院長が持つようになった。また、病院運営体制についても、病院の意思決定及び執行機関としての執行部を設置、外部医院を加えた病院運営審議会の設置、決定機関である病院会議を執行諮問会議に変更、執行諮問会議を円滑に進める為の執行諮問幹事会の設置、執行部措置が直接現場に伝わるように運営組織及び運営支援組織を設置するなど、大幅な変更を行った。
取り組み後の状況
特に運営(支援)組織の設置によって、例えば「患者の予約を正確に管理したい」「院内感染を確実に防止したい」等の現場の意見を直接執行部に言えるようになった。また、病院事務組織を改組し、チーム体制も変更したことで、風通しのよい現場風土ができた。加えて、経営分析業務も実施するようになり、?月次統計(患者数・収支額の分析)や、?医療費発注額による月次管理、?稼動/収入額予測・目標値の作成、?診療科別の収支分析・原価計算も実施している。
法人化に対する国立大学病院全体の取組みとして、管理会計システムの開発・稼動(原価計算)、マネジメントセミナー等の開催や、データベースセンターの設置を行った。その他、人材育成に関しても、医療の高度化に対応できる「医療人」の育成を目指し、様々な研修を実施中である。
一方、がん研究会では、「経営改革タスクフォース」の実施を計画しており、現在、改革の方法について模索中である(平成23年現在)。
結論として、国立大学の法人化によって財政的には厳しくなったが、運営の自由度が増したことは事実であり、今後は如何に病院としての付加価値・特徴を出せるか、無駄を省けるかが病院経営のポイントとなってくると思われる。

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