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石巻医療圏における東日本大震災への対応 (東北大学病院・500床以上)

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医療機関名 東北大学病院
経営主体 特定機能病院
病床規模 500床以上
所属部門 その他
投稿者 石井 正 先生(総合地域医療教育支援部教授 宮城県災害医療コーディネーター)
公開日 2013-02-15
背景
■ 東日本大震災発生時における石巻赤十字病院の対応
3月11日
 14:46 東日本大震災発災
 14:50 災害医療本部を立ち上げ
 15:25 トリアージエリア設置開始
 15:32 ハード損傷状況の確認、職員・入院患者の安否を確認
 15:43 トリアージエリア設置完了、被災者対応開始
 ※「トリアージ」とは最善の救命効果を得るために、傷病者を重症度と緊急性によって分別し治療の優先度を決定すること。医療資源についても優先順位によって傾斜配分を行う。

■ 石巻赤十字病院職員の精神的バックグラウンド
 当院は圏内唯一の3次救急病院・がん診療拠点病院・災害拠点病院であり、「ウチが何とかするしかない」という共通認識があった。
 また宮城県沖地震(1978)の経験者であったため、再地震の確率は30 年以内に99%であり、いつか地震は必ず起こるという災害への高い当事者意識があった。そのため、発災時も慌てることなく、職員はみんな淡々と自分の役割に専念することができた。

■ 震災から学んだ教訓
 ◆災害にもいろいろあるので先入観や思い込みは捨てる!
  被害のタイプは様々なので、過去の例を用いたシミュレーションに固執しすぎるのは危険
 ◆情報は自らが取りに行かなければならない!
  「HELP」がないことが「HELP」サインだと考えるべきである
 ◆反省点
  もっと石巻医療圏の他病院のアセスメントをしていれば、医療圏全体を見渡した災害対応を立案したり、被災した病院への支援・救出をより早く行えたりしたはず。
 ◆大規模災害では行政を含めた機能停止が考えられるので孤立無援を覚悟すべし!
  市内86の病院・クリニックのうち80 施設と、市役所が機能停止し、当院が石巻圏の救護活動を一手に担うことになった。またその際、以下の対応を行っている。
 ・ 処方専用ブース(診察を行わずに処方だけを行うブース)を設立
 ・ 発災1時間後にバイタルネット(薬卸)に薬を発注。通信が回復するまで納品・発注の繰り返し
取り組みの内容
■災害時の行動原則
 ◆医療に限定せず必要なことならば何でもやる
  ・行政や保健所の機能が停止しており、約300ヶ所の避難所のうち、どこが一刻も早い支援を必要としているかが全く不明だった。そこで、自ら情報を集めて「避難所のトリアージ」をすることに。全避難所のデータを時系列ですべて管理・保管しデータの上書きをしないことによって、避難者の咳や嘔吐などの症状推移などを含む各避難所の状況も経時的にモニタリングした。
  ・衛生状態に問題のある避難所にはラップ式トイレや簡易水道を設置
 ◆職種に関係なく、すべての相手に対して敬意を払う(医療者以外にも!)
 いろいろな組織から派遣された医療チームが個別に活動するのは非効率的。各行政組織、東北大、医師会、自衛隊、歯科医師会、薬剤師会などと調整し、組織を一元化することで合意した。
 ◆規則などで縛り過ぎないがコンセプトは明示する
 長期的かつ大規模な救護活動が必要だったので、各救護チームの活動予定を本部が決定する中央集権的な運営から、地方自治的な運営にシフト 。エリア・ライン制を導入した。

  《エリア・ライン制とは?》
  医療圏をエリアで区分し、各エリアに必要な救護チームを割り振るしくみ。各エリアのリーダーが毎日本部でのミーティングに出席したり、アセスメントシートの提出を行ったりするが、活動内容の決定権は各エリアにある。
  ? ラインとは救護チームの派遣が可能な組織(共同体)のこと。
  ? エリア・ライン数は固定化せず、救護ニーズによって適宜変更する。判断基準は2エリアごとの連日ヒアリングと、毎日更新する避難者数や衛生環境などのアセスメントデータ。
 《エリア・ライン制のメリット》
 〔本部側〕
  ・毎日のチーム活動の調整が不要
 〔ライン側〕
  ・必要な情報量が少ないので、情報収集・伝達が容易
  ・活動範囲が限定されるので、地域に密着しやすい
  ・宿泊や移動などの手配がルーチン化するので派遣元の業務量が軽減される
取り組み後の状況
■ 災害に対する心構え
 災害時のマニュアルは迅速な初動の確立には有効だが、それ以降は応用問題の連続。「こうあるべき」「誰がやるべき」ではなく、「どうするか」「どうしたらできるか」が大切。

■ 災害対応に必要なもの
 ?事前のリアルな準備(リアルなマニュアルや実働訓練)
 ?逃げないこころ
 ?データに裏打ちされた客観的視点(アセスメントデータ、本部動静、各種会議議事録、救護カルテ、院内データなど)
 ?コネ・人脈(チームからの信任や関係機関との連携など)
 ?コンセンサス・調整

■ 震災後の取り組み
 ○院内対応の部門別検証・ヒアリング、マニュアルのバージョンアップ
 ○検証目的の実働訓練(職員400 名と関係機関100 名が参加)
 ○イオンとの災害応援協定締結
 ○NPO 法人「災害医療ACT 研究所」設立(参加スタッフ:日赤・DMAT・支援企業)
  ・ 拠点本部へのアドバイザリースタッフの継続的派遣
  ・ 企業との連携窓口・パイプ役
  ・ 自治体災害医療コーディネーターや本部要員を対象にした研修会の開催

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