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当院の経営戦略と事務職員の人材育成 -目指すべき人材像- (名古屋市立大学病院・500床以上)

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医療機関名 名古屋市立大学病院
経営主体 特定機能病院
病床規模 500床以上
所属部門 経営企画
投稿者 滝塚 厚夫(管理部事務課病院経営係副係長)
公開日 2012-11-30
背景
 当院では、「病院経営マネジメント」の経営戦略の元、平成18年に法人化してから5年間、右肩上がりの経営を続けています。手術件数の増加や、5日間の平均在院日数の短縮等により、約64億円の収入増に結びつきました。
 「病院経営マネジメント」とは、「病院スタッフ全員のやる気を引き出すことで安定した経営実績を出し続ける」という考え方です。
 昔から経営改善と言えば「経費削減から」と思われがちですが、まだ収入を伸ばす余地のある病院は、「収益向上に専念すること」が効率的だと思います。加えて、コストカットも事務中心で取り組んできました。
取り組みの内容
(取組み内容)
当院の病院経営マネジメントの特徴は以下の10項目に集約されます。
 1)ミッション、ビジョンが明確である
 2)ビジョンに沿った目標が立てられている
 3)KPI(目標管理指標)を定め、定期的に評価している
 4)目標管理のためのツールが導入されている
 5)結果を評価する基準がある
 6)評価に基づきインセンティブを与えている
 7)毎年経営計画が策定され繰り返されている
 8)経営判断にABCが導入されている
 9)提案(改善)と表彰制度が確立されている
 10)職員の意欲向上を図るアンケートが実施されている

 例えば、「6)評価基準によって診療科ごとに点数をつけ、順位付けを行い、インセンティブを分配」しています。なお、インセンティブは個人の給与に反映させるのではなく、学会参加のための旅費や学習にかかる費用にあててもらっています。
また、経営が上向いている場合には、順位とは無関係に一定額の基礎配分も行っています。
 また、「8)経営判断(原価計算システム)に活動基準型原価計算(ABC)を導入」しています。活動基準型原価計算(ABC)とは、医療行為を単位ごとに分解し、各患者にかかる費用を積み上げる原価計算法です。当院では、診療科別、病棟別、DPC別等に活用し、主に戦略判断するための診断ツールとして使用しています。
 他にも、「9)提案(改善)制度と表彰制度が確立している」のも特徴です。平成21年から全職員を対象に年間を通じて提案(改善)募集を始めました。審査基準に基づいて評価を行い、優れた提案には表彰状や旅費を贈っています。
 マネジメントの推進には、改善提案制度というボトムアップの手法を併用し、今持つ経営資源を有効に活用することも重要です。この提案制度により、「やらされる」から「進んでする」というポジティブな組織風土づくりを目指しています。
 以上のような病院経営マネジメントを通じて、成長を持続させてきたのですが、やや安定期(効率優先、リスク回避、保守的な気風)に入りつつあると感じています。更なる成長曲線へ導くためには、様々なイベントを実施するとともに、「事務職員の人材育成」が重要であると考えています。
 昔の事務職員は医者の小間使いのような存在でしたが、今は「パートナーでありチームの一員」として認められてきました。これからの病院を左右するのは事務職員であると思っています。
 人材育成においては、ジェネラリストの育成だけでなく、「スペシャリストの育成」と「知の伝承」も非常に大切です。プロフェッショナルの事務職員に求められるのは、「幅広い知識の中から方針を企画立案し、それを決定に持ち込み実施すること」だと思います。
しかしながら、実際には、改善が苦手で保守的な職員も多く、病院の事務職を天職と思っている人が少ないのが実情です。このような職場を変えていくためには、「教育」と「風土づくり」が優先課題です。研修は人任せにせず、自らの病院に必要な人材を育成する工夫が必要です。

例えば、当院では下記のような事務職員育成の試みを行っています。
 ・ 新規採用・転入事務職員研修(接遇コミュニケーション研修)
 ・ 他病院への派遣研修(派遣先で意識を高めた職員が起点となって改革を起こすことを期待)
 ・ 職員による自主的勉強会の実施
 ・ 厚生労働省の制度を利用した本格的人材育成研修
 ・ スキルアップを目的とした各種有料研修会への参加

また、職員の意欲向上を図るための改善指標として、年1回全職員を対象に職員アンケートを実施し、集計結果を院内広報等で報告しています。なお、アンケートは共通フォームを使用しているので、他病院との比較も可能です。
これからは、人事に関するすべての事柄を人材教育にシフトするトータルなシステム構築(例えば、育成型の人事異動や実力主義の管理者昇格など)が求められてくると思います。組織の目標管理も個人レベルの目標管理におとしこんでいくことが必要です。
取り組み後の状況
公立病院では、自治体の人事により役職や職員が数年で交代してしまい、知識や組織のマインドが継承しません。
明確な言葉や数字などで表現されたマニュアルなど、OJTで伝えられる形式知に加えて、はっきりと明示化できないノウハウやスキル、センスや感覚など(=暗黙知)をどう伝承していくのかが、公立病院の大きな課題だと思っています。
「人は育てなければ育たない。事務職員が育たないのではなく、我々が育てていないのだ…。」を胸に、今後も人材育成に取り組んでいきたいと思います。

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