全脊椎撮影における目標EI 値の検討 (国立研究開発法人 国立国際医療研究センター・500床以上)
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全脊椎撮影における目標EI 値の検討
医療機関名 |
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター |
経営主体 |
特定機能病院 |
病床規模 |
500床以上 |
所属部門 |
放射線 |
投稿者 |
石橋大典(放射線診療部門) |
公開日 |
2015-04-06 |
- 背景
- デジタル一般撮影装置におけるX線画像の撮影感度は、各装置間毎に独自の感度指標値が提供されています。その為、異なる装置を使用した場合に、表示される感度値と線量の関係を把握する事は、少なからず混乱を招いていました。
そこで国際電気標準化委員会(IEC)は新たな指標値Exposure Index(以下、EI)を定めて、感度指標値の標準化を提案しています。
全脊椎撮影は主に側弯症患者を対象として行われ、若年層の患者を長期間にわたり撮影することがあります。そのため、患者の被ばく線量を可能な限り抑える必要があります。
本研究は、当院のFPD(Flat Panel Detecter)システムにおける全脊椎撮影の撮影条件および、目標EI値を検討し、さらなる線量低減を試みる事にあります。
- 取り組みの内容
- 人体ファントムを用いて管電流(mAs値)以外の条件を管電圧80 [kV],SID 250[cm]、グリッド比 12:1 一定とし、mAs値のみを32, 25, 16, 12.5, 8, 4[mAs]の6段階の条件に変化させ撮影を行ないました。
次に、得られた画像に対して視覚評価を行うことで全脊椎撮影の適正線量を検討しました。評価方法は、各撮影条件で撮影した画像を当院の放射線技師10名による順位付けで行い、正規化順位法を用いて解析を行いました。
画像の視覚評価の基準には、Cobb角計測が可能である事、腸骨稜骨端核が視認可能である事、全体のアライメントが視認可能である事の三点を挙げました。
また、それぞれの撮影条件における照射線量[μGy]を線量計を用いて測定しました。
正規化順位法により距離尺度に変換した結果、4[mAs]から12.5[mAs]のそれぞれの正規化スコアの差分は12.1、0.83、0.84と最小有意差距離の0.4717より大きく、画像に有意な差を認めました。また、12.5[mAs]から32[mAs]については各正規化スコアの差分が0.001、0.29、0.13と最小有意差距離より差分が小さく、画像間の有意差は認められなかった為、12.5[mAs]まで線量を下げることは可能であると考えられました。
以上の結果より、12.5[mAs]におけるEI値350が目標EI値となりました。
線量計による測定結果より、現在の撮影条件である32[mAs]の照射線量が316[μGy]であったのに対し、12.5[mAs]の照射線量は127[μGy]でした。
- 取り組み後の状況
- 16[mAs]から32[mAs]に関しては、線量の変化と比較して正規化スコアの結果に大きな差が見られませんでした。これは、今回の実験が視覚評価による相対的な評価に起因している為と考えられます。正規化順位法は同順位を認めない為、試料間の刺激差が非常に小さい場合には検出力が低いという特性があります。
25[mAs]の正規化スコアが16[mAs]、12.5[mAs]に比べ低くなった点についても同様の理由が挙げられます。しかし、これらを踏まえた上でも12.5[mAs]から32[mAs]については差分が小さく、画像間の有意差は無いと考えられました。
IECのEI値の規定ではマンモグラフィ、断層、複数合成画像は規定から除外するとなっていますが、当院で使用しているFPDシステムは全脊椎撮影の様な複数合成画像の場合も、複数枚撮影の元画像の平均値からヒストグラムを作成し、これを基にEI値を算出しています。算出されたEI値は他撮影と同様に目標EI値を決め感度指標値として参考にすることができます。
しかし、国際規格から除外されている撮影であるため、参考とする場合は、自施設装置における複数合成画像のEI値算出工程を理解したうえでEI値設定することが必要と考えられます。
今後の課題としては、今回検討し求められた撮影条件・目標EI値にて実際の臨床写真を取得し、これらを用いて最終的な条件設定を整形外科医等と協議のうえ、再度検討を行うことにあります。また、全脊椎の側面撮影においても同様の方法にて、撮影条件・目標EI値の設定を行い、線量低減を図りたいと考えています。
結論として、当院での現条件と比較し、FPDシステムにおいて概ね2/5程の撮影条件にて撮影する事が可能であると考えられます。また、上述したように目標EI値は350となりました。
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